マブチモーター(6592) 2019/12期決算レビュー

株式投資

マブチモーターってどんな会社?

マブチモーターとはその名の通り、モーターを作っている会社です。主に車向け小型モーターの世界シェアは5割とトップシェアを誇ります。

売上構成比は、車向けモーター約7割民生業務用(電動歯ブラシなど)が約3割です。売上構成比については、後ほど詳しく説明します。

車載向けモーターって何?

車にはたくさんのモーターが搭載されています。例えば車の窓を開ける時スイッチを押すと窓がウィーンと開いたりしまったりしますよね。その動きはモーターが担っています。マブチモーターではパワーウィンドウ(PW)というカテゴリーになります。高級車になるとシートもスイッチで調節して動いたりしますが、こちらもモーターです。あとはスイッチタイプのパーキングブレーキ(エレクトロニックパーキングブレーキ(EPB))、ミラー、ドアロック、エアコンダンバー、ヘッドライトなどにもモーターが搭載されています。

スマホなどの振動などもモーターが使われていますが、スマホのモーターは日本電産(6594)が圧倒的シェアを誇ります。マブチは日本電産と競合しない、いわゆる安価なタイプのモーターを得意としています。

マブチモーターの2019年12月期連結決算概要

億円売上比前年同期比
売上1,318100.0%-7.9%
売上総利益41031.1%-7.4%
販管費23417.8%+1.7%
営業利益17513.3%-17.4%

売上は1,318億円、売上総利益(粗利あらり)は約31%と製造業の中では平均的かもしくはちょっと良い部類に入ります。製造業は粗利が低いので販管費などでコストを抑え利益を確保するのが定石です。

売上総利益(粗利)とは?

売上総利益とは、売上から原材料を引いた利益のことです。会計上は売上総利益うりあげそうりえきといいますが、ビジネスの世界では粗利あらりといいます。(荒利あらりとも書く。)

例えばあなたがパンケーキ屋さんだと仮定し、パンケーキ1つを100円で売る場合、パンケーキ1つ分の材料(小麦粉、卵、ベーキングパウダー)が60円だとすると、残り40円が粗利となります。この場合、粗利率は40÷100=40%となります。(飲食店の粗利は平均3割程度と低いのですが、パンケーキやお好み焼きなどの粉物は平均よりも粗利が高い、つまり原材料が安いのでここでは粗利40%としました。)

粗利は非常に大切な概念ですので覚えておいて損はないでしょう。業界によって平均的な粗利は違ってきます。ちなみに製造業の粗利は20%から30%程度のところが多いです。その代わり工場のラインを自動化するなどして人件費を抑え利益を確保します。マブチの場合は販管費は売上対比で18%程度なのでよくコントロールされていると言えるでしょう。

小売業などでは粗利は50%程度と高いところが多いですが、その分、人件費や家賃などの販管費がかさみます。小売業の販管費率は大体30%程度のところが多いですね。

化粧品や医薬品、サプリメーカーなどは粗利が非常に高く、70%〜80%程度あります。この業界は原価は安く、粗利が高い傾向にありますが、その分、商品開発のための研究費などにコストをかけています。

業界によって利益構造が色々ありますので、そういったところに目を向けて決算書を読んでみるのも面白いかもしれません。

マブチの一番の強みは、大量生産することで生まれる圧倒的コスト優位性にあると言えます。安価で構造が比較的安易な物を作る製造業の場合、薄利多売であったり、競争がきつかったりして利益率が低いことが多いのですが、マブチの場合は世界トップレベルの生産量、品質管理、コスト管理を徹底し、高い利益率をキープしています。

マブチの2019年のモーター生産量は13億7千万個で、自動車用モーターは平均単価が99.33円、民生業務用モーターが84.1円です。(出所:マブチモーター2019年度ファクトブック

一個百円程度のモーターでこれだけの利益を上げているのは凄いことですよね。営業利益率も13%と、自動車部品メーカーとしては高い利益率です。世界でもトップクラスの生産量と品質で顧客の信頼が厚いのもマブチの強みでしょう。

マブチモーターはどのようにして高い利益率を維持しているのか?

  1. 大量生産:量を稼ぎスケールすることによってコストを抑えています。
  2. 設計の共通化:車には様々なタイプの種類がありますが、なるべく設計を共通化することによってコストを抑えています
  3. 地産地消:マブチは地産地消を進めており、需要が高い地域のそばに工場を建て出荷することでコストを抑えています。最近だと欧州とアメリカの需要増を見込み、ポーランドとメキシコに工場を建てました。そういった先行投資がかさみ、設備投資額はここ数年大きくなっており利益を圧迫していた要因の一つでもあります。

製品別売上構成比

売上の7割は車載向け、3割は民生業務用向け

売上の7割を占める車載用モーターで、半分を中型モーター、残り半分を小型モーターが占めます。

中型モーターとはPW(パワーウインドウ)PS(パワーシート)EPB(エレクトリックパーキングブレーキ)などがあり、中でもPW(パワーウインドウ)は最も単価と利益率が高いと推測されており、マブチが最も力を入れている分野です。車が大型化してきていることもあり(特にアメリカではSUVが好まれるようになってきている)PWの高トルク製品が好まれるようです。マブチでは今年度PWの売上を前年同期比+3.5%の伸びで見ているようです。PSは同▲5.3%、EPBは同▲2.7%で見込んでいるようです。(出所:マブチモーター2019年12月期決算説明会資料

小型モーターには主にミラー、ドアロック、エアコンダンバー、ヘッドライトなどがあります。小型モーターはすでに普及率が高く、小さいモーターで対応できるため単価は低いと推測されます。例えばドアロックなんかはほとんどの車がリモコンタイプでボタンを押すとロックされるタイプですよね。数十年前は実際に鍵でガチャっと開けていたものが、モーターに置き換わったのですが、置き換わる過程で量がどんどん出るので儲かるのですが、一度普及してしまうと次の年は同タイプのものは値段が下がっていくので利幅が減っていきます。家電なんかも型落ちは安かったりしますよね。それと同じ原理です。

地域別売上構成比

2019/12期(百万円)(構成比)
日本14,42410.9%
北・中南米23,01317.5%
欧州30,27423.0%
中国40,66530.9%
アジアパシフィック23,42117.8%

中国向けが約31%と最も大きなウエイトを占めており、次に欧州、アジアパシフィック、北中南米と続きます。なんと日本の売上構成比は一番低いんですね。

中国向けはいわゆる「民族系」と言われる中国のローカルメーカー向けが多くを占めており、2019年は中国の自動車市場が大きく落ち込んだため(2019年CYで前年同期比▲8.2%)、マブチもその影響を受けたと推測されます。また、マブチのような比較的構造が安易なモーターは中国メーカーでも作れる、実際にマブチは競合にシェアを奪われているのではないか?!との声もありましたが、値段がさらに安い中国メーカーのモーターを使って見たものの、やはり品質が悪かった!ということでマブチに結局戻ってきたという話もあるようです。

本当に競合にシェアを奪われているかどうかは実際に確かめることは難しいのですが、前期からの売上減の幅を見る限り(前年同期比▲7.9%)、主に中国ローカル向けの自動車台数減の影響が大きかったのではないかと思います。もし競合にシェアを奪われているとしたら、もっと急激な売上減になるのではないでしょうか?

在庫レベルは?

2019年末時点の棚卸し資産(在庫)は338億円で適性レベル。(出所:マブチモーター2019年度ファクトブック)2018年末の357億円から前年比で約5%減っています。中国や米国で新車が思ったより売れず、たまった在庫調整は終わったと見て良いでしょう。

今後は新しいモデルの新商品への置き換えが進むことにより利益率も戻ってくることが期待されますが、マブチの強い中国ローカル向けの販売が戻ってこないことにはなんとも言えない状態です。

中国の政府は景気対策として自動車関連の政策(おそらく補助金)を出してくると市場は期待していますが(景気刺激策には自動車が手っ取り早いと言われており、単価が高いこと、多くの買い替え需要が消費を刺激するため)それがナンバープレート規制の緩和なのか、HVを含む環境自動車への補助金なのか、自動車業界全体への補助金なのか、中身がまだ見えてこない状況です。

自社株買いも同時に発表

上限120万株、30億円の自社株買いも発表しました。発行済み株式数の1.8%相当です。

期間は2020年2月14日〜2020年12月31

マブチモーター;自己株式の取得枠設定に関するお知らせ

上限30億円なので、額自体は決して大きいものではないですが、市場は素直に好感し発表の次の日は株価は5%程度上げました。

もともと株主還元には積極的な会社というイメージが無かったので、自社株買いはそれなりにポジティブサプライズだったのではないでしょうか。そもそもマブチは相当にキャッシュリッチな会社で、2019年12月末時点で現金及び現金同等物が約1,100億円程度あり、自己資本比率はなんと91%。借金はほとんどなく、無借金と言って良いでしょう。2020年2月14日現時点での時価総額が約2,800億円ですから、持っているキャッシュレベルからすると現時点の株価は安いと言っても良いのではないでしょうか?

リスクは?

株価水準も安く、キャッシュリッチ、自社株買いも実施で比較的安心感のある銘柄かと思いますが、リスクはなんと言っても世界の(特に中国の)自動車生産台数の下振れでしょう。世界の自動車の全需は約9,500万台(2018年;出所:JAMA)ですが、うち約3分の1を占める中国市場の不振、欧州のCO2規制による自動車販売の不振、インドのファイナンス問題による自動車販売の不振など、世界の自動車台数を押し上げる牽引役がいないのです。

売上のおよそ7割を車載向けで稼ぐマブチにとって自動車生産台数は業績を大きく左右する要因です。株式市場も世界の自動車生産台数は伸びないと見ているが故に、マブチをはじめとする自動車部品メーカーへの期待値が低くなっており、結果株価も冴えないという展開になっているのではないのでしょうか。

本記事は取引の勧誘を目的としていません

本記事は情報の提供のみを目的としており、取引の勧誘をするためのものではありません。投資の最終決定は、ご自身の判断でお願いいたします。

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